特別受益と寄与分|遺産分割の調整と10年ルール
最終更新:2026-07-13
「兄は家の頭金を出してもらった」「私だけが親の介護をした」——遺産分割では、法定相続分どおりに分けると不公平に感じる場面があります。これを調整するのが特別受益と寄与分です。さらに相続人以外の貢献に報いる特別寄与料や、2023年施行の10年ルールも押さえておきましょう。裁判所・法務省・民法の一次情報で整理します。
要点: 特別受益=生前贈与等を持ち戻して公平に(903条)。寄与分=財産の維持・増加への特別の貢献分を上乗せ(904条の2)。相続人以外の親族は特別寄与料(1050条)。そして相続開始から10年で特別受益・寄与分の主張は原則できなくなります(904条の3)。
特別受益(生前贈与などの持戻し)
共同相続人の中に「被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるとき」は、その価額を相続財産に加えて計算する(民法903条)
たとえば結婚資金や住宅資金の援助、事業資金の贈与などが特別受益にあたり得ます。これを遺産に持ち戻して各人の取り分を計算し、受けた分を差し引きます。ただし被相続人が「持ち戻さなくてよい」という意思(持戻し免除の意思表示)を示していた場合は、その意思に従います(民法903条)。
寄与分(財産の維持・増加への特別の貢献)
「被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるとき」は、その寄与分を控除・加算して相続分を定める(民法904条の2)
家業を無償で手伝った、私財を投じた、長期間の介護で施設費用を抑えた——such な貢献です。協議で決めますが、調わないときは家庭裁判所が寄与の時期・方法・程度その他一切の事情を考慮して定めます(民法904条の2/「寄与分を定める処分調停」)。なお寄与分は、相続財産から遺贈の価額を引いた残額を超えられません。
特別寄与料(相続人以外の親族の貢献)
寄与分は相続人だけが対象です。そこで2019年施行の改正で、相続人以外の親族にも道が開かれました。
被相続人に対し無償で療養看護等の労務を提供し財産の維持・増加に特別の寄与をした親族は、相続人に対し「特別寄与料」の支払を請求できる(民法1050条)
典型例は「長男の妻」です。請求には期限があり、相続の開始および相続人を知った時から6か月、または相続開始から1年を経過するとできなくなります(民法1050条・裁判所「特別の寄与に関する処分調停」)。※2019年7月1日より前に開始した相続には適用されません。
10年ルール(民法904条の3)
近年の重要な変更です。
「前三条の規定は、相続開始の時から十年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない」(民法904条の3)
つまり相続開始から10年を過ぎると、特別受益・寄与分を考慮した具体的相続分を主張できなくなり、原則として法定相続分・指定相続分で分けることになります。これは令和3年(2021年)改正で新設され、令和5年(2023年)4月1日から施行、早期の遺産分割を促す趣旨です(法務省)。10年経過前に家庭裁判所へ遺産分割を請求していた場合などの例外はありますが、「いつか分ければいい」と放置すると不利になり得る点に注意してください。
具体的な分け方は遺産分割協議、遺言がある場合は遺言・遺留分もあわせてご確認ください。
本ページは制度の一般的な解説です。特別受益・寄与分・特別寄与料の該当性や金額、10年ルールの経過措置の細部は個別事情や改正で異なります。実際の主張・手続きの前に、家庭裁判所の案内や、弁護士・司法書士にご確認ください。