遺留分とは|割合・遺留分侵害額請求・期限(1年)
最終更新:2026-07-12
「遺言で自分の取り分がほとんどない」「特定の相続人にだけ生前贈与されていた」——そんなとき、一定の相続人には最低限の取り分=遺留分(いりゅうぶん)が法律で保障されています。ここでは民法・裁判所・法務省の一次情報にもとづき、誰にいくら、どう請求するのかを整理します。
専門家への相談もご検討を。 遺留分の具体的な計算(財産の評価、生前贈与・債務の扱いなど)は複雑になりがちで、期限(1年)もあります。金額や進め方に迷う場合は、弁護士など専門家への相談をおすすめします。このページは制度の全体像をつかむための一般的な解説です。
1. 遺留分を持つ人:兄弟姉妹には「ない」
「兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、…(略)…当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。」(民法 第1042条)
遺留分があるのは、配偶者・子(や孫などの直系卑属)・父母(や祖父母などの直系尊属)です。兄弟姉妹には遺留分がありません。したがって、相続人が兄弟姉妹だけのケースでは、遺言で全額を他の人に渡すことも可能です。
2. 割合:全体で 1/2(直系尊属のみ 1/3)
まず「全体(総体的)の遺留分」が決まり、それに各自の法定相続分を掛けて「その人の遺留分」を出します。
「一 直系尊属のみが相続人である場合 三分の一/二 前号に掲げる場合以外の場合 二分の一」(民法 第1042条)
- 相続人が直系尊属のみ(父母だけ等):全体の1/3
- それ以外(配偶者や子がいる):全体の1/2
各人の遺留分=総体的遺留分 × その人の法定相続分です。
| 相続人の例 | 総体的遺留分 | 各人の遺留分(例) |
|---|---|---|
| 配偶者と子1人 | 1/2 | 配偶者 1/4・子 1/4 |
| 子2人のみ | 1/2 | 子それぞれ 1/4 |
| 父母のみ(直系尊属のみ) | 1/3 | 父母それぞれ 1/6 |
| 兄弟姉妹 | ― | 遺留分なし |
(法定相続分の考え方は「遺産分割協議」もご覧ください。)
3. 2019年改正:「金銭」で請求する形に
かつては遺留分の請求(遺留分減殺請求)によって不動産などが当然に共有状態になり、かえって紛争が複雑になる問題がありました。2019年(令和元年)7月1日施行の相続法改正で、これが金銭の支払いを求める権利(金銭債権)に改められました。
「遺留分権利者…は、受遺者…又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。」(民法 第1046条)
「遺留分減殺請求権の行使によって当然に物権的効果が生ずるとされている現行法の規律を見直し,遺留分に関する権利の行使によって遺留分侵害額に相当する金銭債権が生ずることにする」(法務省)
これを遺留分侵害額請求といいます(2019年7月1日より前に開始した相続には、改正前の「遺留分減殺請求」が適用されます)。
4. 期限:知った時から1年(相続開始から10年)
「遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。」(民法 第1048条)
「知った時から1年」で時効にかかります。相続開始から10年でも消滅します。遺留分は放っておくと請求できなくなるため、早めの意思表示が重要です。
5. 請求の進め方:意思表示 → 協議 → 家裁の調停
- まず内容証明郵便などで相手方に「遺留分侵害額を請求する」意思表示をする(時効を止めるため)。
- 当事者間で話し合い(協議)を行う。
- まとまらない場合は、家庭裁判所の「遺留分侵害額の請求調停」を利用する。
「家庭裁判所の調停を申し立てただけでは相手方に対する意思表示とはなりませんので、調停の申立てとは別に内容証明郵便等により意思表示を行う必要があります。」(裁判所)
ご確認のお願い。 遺留分の計算や、生前贈与・特別受益・債務の扱いは個別事情で大きく変わります。相続開始日(2019年7月1日の前後)によって適用ルールも異なります。実際の請求の前に、弁護士等の専門家や家庭裁判所にご確認ください。