相続土地国庫帰属制度|いらない土地を国へ・負担金
最終更新:2026-07-13
「相続したものの、遠方で使い道のない土地」「管理も売却もできず固定資産税だけかかる土地」——こうした負担を手放す選択肢として2023年(令和5年)4月に始まったのが、相続土地国庫帰属制度です。一定の要件を満たせば、相続した土地の所有権を国に引き取ってもらうことができます。ここでは法務省の情報をもとに、要件と費用を整理します。
はじめにお読みください。 この制度は「どんな土地でも引き取ってもらえる」ものではありません。建物がある・担保がある・境界が不明などの土地は申請すらできません。承認されても負担金が必要です。まず相続放棄や売却・寄付と比較し、迷ったら法務局(本局)の相談を利用してください。
1. 早わかり表
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 施行 | 2023年(令和5年)4月27日。施行前に相続した土地も対象 |
| 申請できる人 | 相続・遺贈(相続人に対する)で土地を取得した相続人のみ(売買取得は不可) |
| 申請先 | 土地がある都道府県の法務局・地方法務局(本局)の不動産登記部門(支局・出張所は不可) |
| 審査手数料 | 土地一筆あたり1万4,000円(収入印紙・返還なし) |
| 負担金 | 承認時に原則20万円(宅地・農地・森林は面積により加算) |
| 標準処理期間 | 8か月(事案により超える場合あり) |
2. 申請できる人・できない土地(却下事由)
申請できるのは、相続または相続人に対する遺贈で土地を取得した相続人です。共有地の場合は共有者全員で申請します。
ただし、次のような土地はそもそも申請できません(却下事由)。
- 建物が現に存在する土地(法務省は「現に建物が存在する場合は、承認申請することはできません」としています)
- 抵当権等の担保権や、地上権・地役権・賃借権等の使用収益権が設定されている土地
- 現に道路として利用されるなど、他人による使用が予定されている土地(墓地・境内地・水道用地等)
- 法務省令で定める基準を超える特定有害物質で汚染されている土地
- 隣接地との境界が明らかでない土地、所有権の存否・範囲に争いがある土地
3. 申請できても不承認になる土地(不承認事由)
申請できても、審査で「通常の管理・処分に過分な費用・労力がかかる」と判断されると不承認になります。代表的な類型は次のとおりです。
- 勾配30度以上・高さ5メートル以上で崩落の危険がある崖を有する土地
- 通常の管理・処分を阻害する工作物・車両・樹木などが地上にある土地
- 除去しなければ通常の管理・処分ができない有体物が地下にある土地
- 所有権に基づく使用・収益が現に妨害され、隣接地所有者との争訟が必要な土地
- 土砂崩壊・鳥獣被害・管理不十分な森林など、過分な費用・労力がかかる土地
4. 負担金(10年分の管理費相当)
承認されると、国有地としての管理費相当額として負担金を納付します。
- 原則20万円が基本額(法務省)。
- ただし市街化区域等の宅地・農用地区域内の農地・森林は、面積に応じて20万円以上になる場合があります。
- 負担金は、国有地の種目ごとに10年分の標準的な管理費用を考慮して算定されます。
- 通知(納入告知)を受け取った翌日から30日以内に納付する必要があります。期限を過ぎると承認は失効し、再申請が必要になります。
- 土地の所有権は、負担金を納付した時点で国へ移転します。
5. 手続きの流れ
- 事前相談(予約制):法務局・地方法務局(本局)の窓口・電話・ウェブで相談できます(支局・出張所は不可)。予約は「法務局手続案内予約サービス」から。
- 承認申請:土地がある都道府県の本局へ申請書を提出(審査手数料1筆1万4,000円)。
- 審査(標準8か月):書面審査・実地調査。
- 承認・負担金の通知 → 30日以内に負担金を納付 → 国庫帰属。
なお、そもそも相続で引き継ぎたくない場合は、遺産全体を放棄する相続放棄(原則3か月以内)という選択肢もあります。ただし相続放棄は「土地だけ放棄」はできず、預貯金など他の遺産も一切受け取れなくなる点に注意してください。土地の名義がまだ故人のままなら、先に相続登記(義務)も必要です。
ご注意(免責)
本ページは相続土地国庫帰属制度の一般的な解説であり、個別の土地が要件を満たすか、負担金がいくらになるかを判断・保証するものではありません。却下・不承認事由の該当性や負担金の算定は土地の状況によって異なります。申請の可否・費用は、土地を管轄する法務局(本局)または司法書士・弁護士にご確認ください。