相続放棄ガイド|3か月の期限・手続き・注意点
最終更新:2026-07-12
家族が亡くなったとき、遺されるのはプラスの財産だけとは限りません。借金や保証債務などマイナスの財産が多い場合に、これらを引き継がずに済ませる手続きが「相続放棄」です。期限が3か月と短く、しかも遺産に手をつけると放棄できなくなるなど注意点が多い制度です。ここでは裁判所・民法の一次情報をもとに整理します。
はじめにお読みください。 相続放棄は法律上の効果が大きく、いったん受理されると撤回できません(民法919条1項)。判断に迷う場合や借金の有無がはっきりしない場合は、期限内に司法書士・弁護士などの専門家へ相談することを強くおすすめします。このページは制度の全体像をつかむためのものです。
1. 相続放棄とは(早わかり表)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 効果 | 被相続人の権利・義務を一切承継しない(プラス財産もマイナス財産も引き継がない) |
| 期限 | 自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月(熟慮期間) |
| 手続き | 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ「相続の放棄の申述」 |
| 費用 | 申述人1人につき収入印紙800円分+連絡用の郵便切手 |
| 効果(対外) | 初めから相続人でなかったものとみなされ、相続権は次順位者へ移る |
裁判所は、相続放棄を「相続人が被相続人の権利や義務を一切受け継がない」手続きと説明し、申述は「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内にしなければならない」としています。
2. 期限は「知った時から3か月」― 伸長もできる
熟慮期間の起算点は「自己のために相続の開始があったことを知った時」です。必ずしも死亡日とは限りません。
- この3か月の間に、単純承認・限定承認・相続放棄のいずれかを選びます。
- 財産の状況を調べても決められないときは、家庭裁判所へ期間の伸長を申し立てられます。
- 被相続人の死亡から3か月を過ぎていても、相続の開始を知った日を明らかにする書面を添えることで申述が受理される場合があります(個別判断のため裁判所・専門家に確認を)。
3. 手続きと費用
- 申述先:被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所
- 提出物:相続放棄の申述書、戸籍等の添付書類(申述人と被相続人の関係により異なる)
- 費用:申述人1人につき収入印紙800円分+連絡用の郵便切手(切手代は裁判所により異なる)
4. 最大の注意点 ― 財産に手をつけると放棄できない
相続放棄を考えるなら、遺産に手をつけないことが鉄則です。
民法921条1号は「相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき」は単純承認をしたものとみなす(=以後は放棄・限定承認ができない)と定めています。これを法定単純承認といいます。
- 被相続人の預貯金を引き出して使う、遺品や不動産を売る・名義を変える、といった行為は「処分」とみなされ、放棄できなくなるおそれがあります。
- また、3か月の熟慮期間内に何もしなかったときも単純承認とみなされます(921条2号)。放棄するなら期限内の手続きが必須です。
- 亡くなった方の預貯金は口座凍結される点もあわせて、預貯金の相続と口座凍結ガイドや死亡後の高額療養費ガイド(受け取ると単純承認になり得る)もご確認ください。
5. 限定承認・次順位への影響
- 限定承認:得た財産の限度でのみ債務を引き継ぐ方法です。相続人全員が共同して、3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります(一人でも反対するとできません)。
- 次順位への影響:放棄によって相続権は次順位者へ移ります。たとえば子が全員放棄すると親、さらに兄弟姉妹へと移ります。借金を承継させたくない場合は、次順位の親族も放棄の手続きが必要になることがあります。
- 撤回はできない:いったんした承認・放棄は、熟慮期間内でも撤回できません(民法919条1項)。
なお、受取人が指定された死亡保険金など、相続財産に含まれない財産の扱いは個別の判断が必要です。相続放棄をしても受け取れる場合がありますが、必ず保険会社や専門家に確認してください。
ご注意(免責)
本ページは相続放棄・限定承認の一般的な解説であり、個別の可否や有利・不利を判断・保証するものではありません。必要書類は申述人と被相続人の関係で異なり、熟慮期間の起算点や3か月経過後の取り扱いは個別の事情によります。手続きの誤りは取り返しがつかないことがあります(撤回不可)。具体的なご相談・お手続きは、管轄の家庭裁判所または司法書士・弁護士へ早めにご確認ください。