高額療養費の払い戻しガイド|死亡後は相続人が請求
最終更新:2026-07-12
医療機関の窓口で支払う1か月の自己負担が一定の上限を超えたとき、その超えた分が払い戻されるのが「高額療養費」です。家族が入院・手術などで高額の医療費を負担していた場合、亡くなった後でも相続人が請求できます。ここでは厚生労働省・自治体の情報をもとに、制度の基本と、とくに死亡後の請求・時効・税金の扱いを整理します。
はじめにお読みください。 高額療養費は葬祭費・埋葬料とはまったく別の制度で、それぞれ申請が必要です。また死亡後に受け取る高額療養費は相続財産にあたり、未支給年金(相続財産に含めない)とは税務上の扱いが異なります。相続放棄を検討している場合はとくに注意が必要です(後述)。金額・区分は改定されます。実際の手続きは、加入していた保険の保険者・市区町村でご確認ください。
1. 高額療養費のしくみ(早わかり)
厚生労働省は「医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が上限額を超えた場合、その超えた額を支給する。上限額は、年齢や所得に応じて定められて」いると説明しています。
- 単位は暦月(1日〜末日)。月をまたぐ入院は月ごとに区切って計算します。
- 上限額(自己負担限度額)は年齢・所得で異なります。
- 世帯合算:同じ保険の世帯内で1か月の自己負担を合算し、限度額を超えれば超過分が支給されます(70歳未満は1件21,000円以上が合算対象)。
- 多数回該当:直近12か月に高額療養費が3回以上あると、4回目以降は上限額がさらに軽減されます。
自己負担限度額(70歳未満・ひと月・現行)
| 所得区分(目安の年収) | 自己負担限度額(月) | 多数回該当 |
|---|---|---|
| 区分ア(約1,160万円超) | 252,600円+(医療費総額−842,000円)×1% | 140,100円 |
| 区分イ(約770〜1,160万円) | 167,400円+(医療費総額−558,000円)×1% | 93,000円 |
| 区分ウ(約370〜770万円) | 80,100円+(医療費総額−267,000円)×1% | 44,400円 |
| 区分エ(約370万円以下) | 57,600円 | 44,400円 |
| 区分オ(住民税非課税) | 35,400円 | 24,600円 |
- 70歳以上は別区分(現役並み・一般・低所得)で、外来だけの上限などの仕組みがあります。
- 事前の負担軽減:マイナ保険証(オンライン資格確認)を使うか、事前に「限度額適用認定証」を提示すれば、1つの医療機関での窓口支払いを最初から限度額までにできます。
今後の改定予定。 厚生労働省によると、令和8年8月から新たに年単位の「年間上限」が設けられ、令和9年8月からは所得区分がよりきめ細かく細分化される予定です。金額・区分は必ず最新の官源でご確認ください。
2. 死亡後は「相続人」が請求する
被保険者(世帯主など)が亡くなった後に生じた・未請求の高額療養費は、相続人代表者の申請により支給されます。
板橋区は「被保険者が亡くなった場合は、相続人代表者の手続き(申請)により、高額療養費を支給します」と案内しています(後期高齢者医療制度)。
主な必要書類の例:
- 相続権が確認できる書類(戸籍、または法定相続情報一覧図の写しなど)
- 高額療養費支給申請書
- 相続人代表者の届出書・申立書、相続人代表者名義の振込先がわかるもの
なお、相続人が亡くなった方と住民票上同一世帯だった場合などは、続柄の書類の添付が不要となる自治体もあります。国民健康保険・後期高齢者医療は市区町村(保険年金課の給付担当)が窓口で、加入していた保険(協会けんぽ・健康保険組合など)によって窓口・様式が異なります。
3. 時効は2年 ― 葬祭費とは別に申請
高額療養費を申請できる期間(時効)は、診療を受けた月の翌月1日から2年以内です。2年を過ぎると請求できなくなります。死亡後の相続人による請求も同じ時効です。
葬祭費・埋葬料とは別制度。 高額療養費(医療費の払い戻し)と、葬祭費・埋葬料(葬儀に対する給付)は別のもので、それぞれ申請が必要です。給付の見分け方は葬祭費・埋葬料の完全ガイドで解説しています。手続き全体の順番は死亡後の手続きガイドもあわせてご覧ください。
4. 税金・相続の注意 ― 「相続財産」になる
死亡後に相続人が受け取る高額療養費は、本来は亡くなった方本人が受け取るはずだったもので、亡くなった方の「未収金」=相続財産として扱われます。相続税がかかる財産には、現金・預貯金のほか「金銭に見積もることができる経済的価値のあるすべてのもの」が含まれるためです。遺産総額が基礎控除額を超える場合は、相続税の課税対象になり得ます。
未支給年金との違いに注意。 同じ「死亡後に遺族が受け取るお金」でも、未支給年金は遺族固有の権利で相続財産に含めず(受取人の一時所得)、高額療養費の未支給分は相続財産に含まれるという違いがあります。
相続放棄を考えている方へ。 高額療養費は相続財産にあたるため、相続放棄を予定している方がこれを受け取って費消すると、単純承認とみなされ相続放棄ができなくなるおそれがあります。相続放棄を検討中は、受け取る前に司法書士・弁護士へご相談ください。
ご注意(免責)
本ページは高額療養費制度の一般的な解説であり、個別の支給額・可否を保証するものではありません。自己負担限度額の区分・金額は改定され(令和8年8月に「年間上限」新設、令和9年8月に区分細分化が予定)、死亡時の申請様式・必要書類・窓口は保険者(協会けんぽ・健康保険組合・国民健康保険・後期高齢者医療)や自治体によって異なります。税金・相続の取り扱いは個別事情で変わります。実際のお手続きは加入していた保険の保険者・市区町村の窓口へ、税務・相続放棄のご相談は税理士・司法書士・弁護士など専門家へご確認ください。