預貯金の相続ガイド|口座凍結と遺産分割前の払戻し
最終更新:2026-07-12
家族が亡くなると、その方の銀行口座は相続手続きが終わるまで原則として使えなくなります(いわゆる口座凍結)。一方で、葬儀費用や当面の生活費のために、遺産分割の前でも一定額を引き出せる制度が用意されています。ここでは全国銀行協会・法務省の情報をもとに、凍結のしくみ・手続きの流れ・払戻し制度を整理します。
はじめにお読みください。 必要書類や払戻し制度を使えるかは、遺言の有無・相続のケース・金融機関によって異なります。各金融機関の案内も「概ね以下の書類」「お取引金融機関にお問い合わせください」と留保しています。実際の手続きは取引金融機関でご確認ください。
1. 口座凍結のしくみ(早わかり)
全国銀行協会は「相続の連絡と同時に、お亡くなりになられたお客さま(被相続人)の口座での取引(預金の入出金等)は、原則として制限されますので、ご留意ください」と案内しています。
- 役所への死亡届では自動的に凍結されません。 金融機関が名義人の死亡(相続)を把握・連絡を受けた時点で取引が制限されます。
- 凍結されると、公共料金や家賃などの口座振替も止まります。引き落とし口座になっている場合は、早めに別口座への変更手続きが必要です。
- 凍結前だからと安易に引き出すのは禁物です。相続人間のトラブルや、相続放棄を考えている場合は「財産の処分」とみなされ放棄できなくなるおそれ(法定単純承認)があります。
2. 相続手続きの流れ
- 取引金融機関へ連絡(口座名義人が亡くなったことを伝える)
- 相続のケースを確認(遺言書の有無、遺産分割協議書の有無、家庭裁判所の調停・審判の有無)
- ケースに応じた必要書類を準備(下記)
- 金融機関所定の相続手続書類に相続人が記入・署名捺印して提出
- 金融機関の確認後、払戻し・名義変更等が行われる
必要書類の例(遺言書がなく、遺産分割協議書がある場合)
- 被相続人の出生から死亡までの連続した除籍・戸籍謄本(全部事項証明書)
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書
- 遺産分割協議書(相続人全員の署名・捺印)
- 通帳・キャッシュカード等
3. 遺産分割前の払戻し制度(1金融機関150万円まで)
遺産分割が終わる前でも、葬儀費用や生活費などのために、各相続人が単独で一定額を払い戻せる制度があります(2019年7月施行の民法改正で創設)。
計算式: 相続開始時の預金額 × 1/3 × その相続人の法定相続分
- 例:ある口座の普通預金が600万円、相続人が長男・次男の2人なら、長男は「600万円 × 1/3 × 1/2 = 100万円」まで単独で払い戻せます。
- 上限は同一の金融機関あたり150万円(同じ銀行の複数支店に預金がある場合は全支店合計で判定)。複数の金融機関に預金があれば、各金融機関でそれぞれ判定されます。
前渡しである点に注意。 法務省は、この制度を「生活費や葬儀費用の支払,相続債務の弁済などの資金需要に対応できるよう,遺産分割前にも払戻しが受けられる制度」と説明しています。払い戻した分は、後日の遺産分割でその相続人が取得したものとして調整されます(余分にもらえるわけではありません)。遺言がある場合など、この制度を使えないケースもあります。
4. 手続きを楽にする「法定相続情報証明制度」
銀行・相続税・年金・不動産登記…と相続手続きは多く、そのたびに戸籍謄本の束を提出するのは大変です。
法務局(登記所)に戸籍謄本等を提出すると、登記官が確認して「法定相続情報一覧図の写し」を交付します。これは「相続登記のほか、銀行、相続税、年金、自動車登録などの各種相続手続に使用することができます」(法務局)。
一覧図の写しは無料で複数通交付を受けられるため、複数の提出先で同時並行して手続きを進められます。
ご注意(免責)
本ページは預貯金の相続手続きの一般的な解説であり、個別の可否・金額を保証するものではありません。必要書類・様式・払戻し制度の利用可否は、遺言の有無や相続のケース、金融機関によって異なります。遺産分割・相続放棄・相続税の判断は個別の事情によります。実際のお手続きは取引金融機関・法務局へ、遺産分割や相続放棄のご相談は司法書士・弁護士・税理士など専門家へご確認ください。手続き全体の順番は死亡後の手続きガイドもあわせてご覧ください。