配偶者の税額軽減ガイド|1億6000万円まで相続税0
最終更新:2026-07-13
配偶者が遺産を相続するとき、相続税を大きく軽くする——場合によってはゼロにする——のが、配偶者の税額軽減(配偶者控除)です。非常に効果の大きい制度ですが、「使えば必ず得」とは限らず、二次相続まで考える必要があります。ここでは国税庁の情報をもとに整理します。
はじめにお読みください。 この制度は、相続税が0円になる場合でも申告が必要です。「税額がゼロなら申告しなくていい」は誤りで、申告しないと適用を受けられません。相続税の全体像は相続税の基礎ガイド、自宅の土地は小規模宅地等の特例もあわせてご確認ください。
1. 早わかり表
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 軽減額の上限 | 1億6,000万円、または配偶者の法定相続分相当額のいずれか多い金額 |
| 対象の配偶者 | 婚姻届を出した配偶者のみ(内縁は不可) |
| 分割の要件 | 原則、申告期限(10か月)までに遺産分割が確定していること |
| 未分割の救済 | 「申告期限後3年以内の分割見込書」で3年以内の分割まで対象 |
| 申告 | 税額が0でも申告書の提出が必須 |
| 対象外 | 仮装・隠蔽していた財産 |
2. いくらまで非課税になるのか
国税庁は、配偶者が遺産分割や遺贈で実際に取得した正味の遺産額のうち、次の金額のどちらか多い金額までは配偶者に相続税がかからない、としています(No.4158)。
- 1億6,000万円
- 配偶者の法定相続分相当額
たとえば法定相続分が2分の1で遺産が3億円なら、法定相続分相当額は1.5億円。この場合は1億6,000万円(多いほう)まで非課税です。遺産がもっと多く、配偶者の法定相続分が1億6,000万円を超えるなら、その法定相続分まで非課税になります。多くの家庭で、配偶者に相続税は生じません。
3. 対象になる配偶者(内縁は不可)
対象は法律上の婚姻届を提出した配偶者に限られます。国税庁の基本通達は、事実上婚姻関係と同様の事情にあっても、「いわゆる内縁関係にある者は、当該配偶者には該当しない」としています。
4. 分割の要件と未分割の救済
配偶者の税額軽減は「実際に取得した財産」を基に計算するため、申告期限(10か月)までに遺産分割が確定していない財産は対象外です。
- ただし救済措置があります。申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておけば、申告期限から3年以内に分割した財産にも適用を受けられます。
- 申告後に分割が成立した場合は、分割成立日の翌日から4か月以内に「更正の請求」をします。
- さらに3年を過ぎてもやむを得ない事情があり税務署長の承認を受けた場合は、事情消滅後4か月以内の分割も対象になります。
5. 税額0でも申告が必要
もっとも間違えやすい点です。国税庁の申告要否判定コーナーは、税額軽減の適用によって「納付すべき相続税額が『0』となる人であっても」、適用を受けるには相続税の申告書に適用を受ける旨など所定事項を記載し、戸籍謄本・遺言書や遺産分割協議書の写し(協議書には相続人全員の印鑑証明書)などを添付して提出する必要があるとしています。なお、仮装・隠蔽していた財産はこの軽減の対象外です。
6. 二次相続に注意(使い切りが最適とは限らない)
配偶者の税額軽減は配偶者にだけ・一次相続限りの特例です。ここに落とし穴があります。
- 一次相続(例:夫→妻)で軽減を最大限使い、配偶者に多く相続させると、その一次相続の税額は下がります。
- しかし、その配偶者が亡くなる二次相続(例:妻→子)では、この軽減が使えません。結果として、一次相続で配偶者に寄せすぎると、一次+二次のトータルで税負担が増えることがあります。
どの配分が有利かは、遺産額・相続人・二次相続時の財産見込みで変わります。金額が大きい場合は、遺産分割の段階で税理士に二次相続まで含めた試算を依頼することをおすすめします。
ご注意(免責)
本ページは配偶者の税額軽減の一般的な解説であり、個別の税額・有利不利を判断・保証するものではありません。制度は法令改正で変わることがあります。実際の適用・申告は、国税庁の最新のタックスアンサー・税務署・税理士にご確認ください。