自筆証書遺言書保管制度ガイド|法務局で保管・検認不要
最終更新:2026-09-27
この記事の要点
- 自分で書いた遺言を法務局が保管する制度(2020年開始)。
- 紛失・改ざんを防ぎ、相続後の家庭裁判所の検認が不要になる。
- 手数料は1通3,900円。
「自筆で遺言を書いたが、紛失や改ざん、死後に見つけてもらえるか心配」——そんな自筆証書遺言の弱点を補うのが、自筆証書遺言書保管制度です。2020年に始まった、法務局が自筆証書遺言を預かる制度で、相続開始後の家庭裁判所の検認が不要になる大きなメリットがあります。ここでは法務省の情報をもとに整理します。
はじめにお読みください。 この制度が保証するのは「保管」と「様式(外形)の確認」であって、遺言の内容が有効かどうかは保証しません。内容面の確実性を最重視するなら、公証人が関与する公正証書遺言も選択肢です。両者の違いを理解して選んでください。
1. 早わかり表
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 開始 | 2020年(令和2年)7月10日 |
| 何を | 自分で書いた自筆証書遺言を法務局(遺言書保管所)が保管 |
| メリット | 紛失・改ざん・隠匿の防止/家庭裁判所の検認が不要 |
| 注意 | 内容の有効性は保証しない(外形的チェックのみ) |
| 手続き | 本人が予約して出頭(代理・郵送申請は不可) |
| 手数料 | 保管申請=遺言書1通3,900円 |
| 様式 | A4サイズ・所定の余白・片面のみ |
2. 制度のメリット
法務省が挙げる主なメリットは次のとおりです。
- 紛失・亡失のおそれがない(法務局が保管)。
- 相続人等による破棄・隠匿・改ざん等を防げる。
- 相続開始後、家庭裁判所における検認が不要。「相続開始後、家庭裁判所における検認が不要です!」(法務省)。
- 保管申請時に、民法所定の自筆証書遺言の形式に適合するか外形的なチェックを受けられる。
一方で、「本制度は、保管された遺言書の有効性を保証するものではありません」(法務省)。様式は満たしても、内容の解釈や有効性が争われる可能性は残ります。
3. 保管申請の手続き・様式・手数料
- 予約制・本人出頭:手続きの多くは予約が必要で、遺言者本人が法務局へ出向く必要があります。法務省は「遺言書の保管の申請時には、必ず遺言者本人が出頭しなければなりません」としています(よくあるご質問)。病気で出向けない場合は、この制度を利用できないと明記したうえで、公正証書遺言なら公証人が出張して作成できること、介助のための付添人の同伴は問題ないことも案内しています。
- 手数料:保管申請は遺言書1通につき3,900円。
- 様式:遺言書はA4サイズで、上5mm・下10mm・左20mm・右5mmの余白を確保し、片面のみに記載する必要があります(両面記載は不可)。
自筆証書遺言そのものの書き方の基本(全文自書・日付・署名押印など)は遺言(種類と選び方)もご確認ください。
4. 家族が亡くなったあと:遺言書を預けていたかを調べ、内容を確かめる
以下はすべて、遺言者が亡くなった後(相続開始後)でなければできない手続きです(法務省)。
手順1:預けていたかどうかを調べる(遺言書保管事実証明書)
故人が遺言を書いていたか分からないときは、まずこれを請求します。法務省は用途をこう説明しています。
「例えば、生前、被相続人が遺言書を作成したかどうかを一切知らない相続人が、遺言書保管所に同人の遺言書が保管されていないか、確認するなどの目的で取得することが考えられます。」(法務省)
- 請求先:「交付請求は、全国どこの遺言書保管所でも手続可能です。」故人が住んでいた地域の法務局でなくてかまいません(都道府県ごとの遺言書保管所は都道府県別のページに掲載しています)。
- 方法:郵送または来庁。法務省は郵送をすすめており、来庁する場合は予約が必須です。
- 主な添付書類:遺言者が亡くなったことを確認できる書類(戸籍(除籍)謄本など)、請求者の住民票の写し、請求者が相続人であることが確認できる戸籍謄本。来庁時は顔写真付きの身分証明書も必要です。
- 手数料:1通800円(収入印紙)。
読み方に注意。 相続人として請求して「保管されていない」と出た場合は、その遺言者が遺言書保管所に一切遺言書を預けていないという意味です。一方、相続人以外(受遺者・遺言執行者など)として請求した場合に証明されるのは、請求者を受遺者や遺言執行者とする遺言書が無いことだけで、法務省は「当該請求人を受遺者等としない遺言書が保管されている可能性があります」と注意しています。
また、この証明書で分かるのは法務局に預けた自筆証書遺言があるかどうかだけです。自宅などに保管された自筆証書遺言や、公正証書遺言の有無はこれでは分かりません。
手順2:内容を確かめる(遺言書情報証明書・閲覧)
| 手続き | できること | 請求できる場所 | 手数料(法務省) |
|---|---|---|---|
| 遺言書情報証明書 | 遺言書の画像がすべて印刷された、遺言書の内容の証明書。相続登記や預貯金の手続きに原本の代わりとして使う | 全国どこの遺言書保管所でも(郵送可) | 1通1,400円 |
| モニター閲覧 | 遺言書の画像をモニターで見る | 全国どこの遺言書保管所でも(予約必須) | 1回1,400円 |
| 原本閲覧 | 遺言書そのものを見る | 原本を保管している遺言書保管所のみ(予約必須) | 1回1,700円 |
| (参考)遺言書保管事実証明書 | 保管されているかどうか | 全国どこの遺言書保管所でも(郵送可) | 1通800円 |
- 原本は返してもらえません。 法務省は「遺言書保管所に保管された遺言書は、遺言者自身からの撤回以外には、相続人であっても返還することはできません」としています。だから各種手続きには遺言書情報証明書を使います。家庭裁判所の検認は不要です。
- 添付書類は法定相続情報一覧図の写しが便利です。 法務省は、住所の記載がある法定相続情報一覧図の写しを使うと「審査にかかる期間が短くなります」としています。ほかの相続手続きにもそのまま使えます。
法務局からの通知は「待っていれば来る」とは限らない
通知には2種類あります。
| 通知 | いつ・誰に届くか |
|---|---|
| 関係遺言書保管通知 | 相続人等の誰かが閲覧や遺言書情報証明書の交付を受けたときに、ほかのすべての相続人等へ。特段の手続きは不要 |
| 指定者通知 | 遺言者が保管申請時に希望して指定した人(3名まで)へ。法務局が戸籍担当部局と連携して死亡を確認した場合などに届く |
注意したいのは関係遺言書保管通知の条件で、法務省は次のように書いています。
「遺言者死亡後であっても、関係相続人等のうちのいずれかの方が、遺言書の閲覧等をしなければ、通知はされません。」(法務省)
つまり、指定者通知が設定されておらず、誰も閲覧等をしていなければ、遺言書が保管されていても誰にも知らされないことがあり得ます。故人が遺言を残した可能性が少しでもあるなら、手順1の遺言書保管事実証明書で確かめるのが確実です。
なお、関係遺言書保管通知を受け取った人が遺言書情報証明書や閲覧を請求するときは、法務省が「手続に共通して必要となるもの」として挙げている添付書類が不要になります(請求人の氏名・住所が記載された住民票の写し等は必要)。指定者通知だけを受け取った場合は、この省略はできません。
5. 検認制度との関係
この制度の最大の実務メリットが、遺言書の検認が不要になることです。通常、自筆証書遺言は家庭裁判所での検認が必要ですが、本制度を利用すれば、交付される遺言書情報証明書によって検認なしに相続手続きへ進めます。遺族の負担と時間を減らせます。
ご注意(免責)
本ページは自筆証書遺言書保管制度の一般的な解説であり、個別の遺言の有効性や手続きの可否を判断・保証するものではありません。手数料・様式・運用は法改正や各法務局の案内で変わることがあります。実際の手続きは、管轄の法務局(遺言書保管所)の最新の公式案内や、弁護士・司法書士にご確認ください。